介護記録による業務量過多。なぜ介護現場で電子化が進まないのか

介護記録や作業のIT化
介護業務は多忙を極めますが、現場をさらに大変にさせているものとして、介護記録の作成があります。介護記録は手書きで作成しなければならない施設も多く、非常に手間がかかります。一方でパソコンやiPadでの介護記録を導入している施設もあり、なぜ依然として手書きの記録方法がとられているのか、注目してみたいと思います。

目次

  1. 【1】手書き記録の弊害とは?

  2. 【2】なぜ電子化が進まないのか?

    1. 1.データ改ざん

    2. 2.電子化へのコスト

    3. 3.中年スタッフの電子化への抵抗

  3. 【3】電子化のメリット

手書き記録の弊害とは?

介護士は利用者の状態を把握し、最適な介護をするために、スタッフ間の業務の引継ぎや状況の記録・報告といった介護記録業務が非常に重要となっています。

利用者の介護に加えて、この介護記録にも多くの時間を費やすため、介護士の大きな負担となっています。

介護記録に多くの時間を費やす原因は、手書きでの作成方法にあります。利用者一人一人の状況や対応した内容を詳細に用紙に書き込んでいく必要があるため、時間を要してしまうのです。

例えば、

「3/16 13:20  昼食後、他の利用者がくつろぎ、いつものように楽しそうにおしゃべりを始めた。いつもは話の中心として話す斉藤さんだが、今日はあまり元気がない様子で、外を見つめることが多かった。スタッフ佐藤が「お話しませんか」と声をかけるも、笑顔でうなずくばかりで一人にしてほしい様子。15分ほど斉藤さんを見ていた後、13:35頃、お気に入りの椅子に座り、眠り始めた。午前中に行なったイベントではしゃぎすぎた為、少し疲れて休みたかったようだ。」

のように作成していきます。これを全ての利用者分、手書きで行なうことで結構な時間を必要としますし、介護士の相当な負担となっています。

この記録業務は、介護業務が終わってから作成することが多いですが、この時間はサービス残業となることも多いです。

特に新人のうちは業務に不慣れなため、記録業務だけでも一時間以上要することも珍しくありません。

なぜ電子化が進まないのか?

 

介護日誌のIT化

 

それは、電子化を行なうと、①過去にさかのぼってのデータ改ざんが容易になること、②電子化には導入コストとランニングコストがかかること、③中年スタッフの電子化への抵抗が考えられます。

データ改ざん

施設やスタッフにとって都合の悪い記録は、手書きならば書き直すことができないですが、パソコン上なら容易に書き換えることができます。なかったことをあったことに出来ますし、あったことをないことにすることも可能です。不正に書き直すことを防止するには、書類に手書きでの作成が良く、電子化が導入しない一因にもなっています。

電子化へのコスト

電子化へは、パソコンやipadを購入する必要がありますし、毎月発生するソフト使用料も支払う必要があります。パソコンが1台10万円、ipadが一台4万円、ソフトが月額2万5千円くらいとすると、職員数にもよりますが、導入コストに数十万円、ランニングコストに数万円が発生します。スタッフの負担を考えるならば、必要な投資ですが、それを嫌う施設経営者も存在しますから、導入が進みません。

中年スタッフの電子化への抵抗

20、30代にとってはパソコンを使用することは当たり前ですが、40代~60代の中ではパソコンに触ることが苦手で、かなりの抵抗をもっている人もいます。

電子化への抵抗を感じる人には、手書きしか記録方法がなく、また抵抗を感じる人が多数の施設では、電子化を導入しづらくなります。

介護記録の電子化は、慣れてしまえば大変便利なシステムであるため、パソコンやipadの触り方を研修するなどすれば導入できそうですが、電子化への抵抗は根深いものがあるため、簡単に導入することはできない状況です。

電子化のメリット

パソコンで情報管理をするとほしい情報だけ、時系列でみることが可能です。これは膨大な書類を引っ張り出し、一つの情報を得るのに全ての情報に目を通さないといけない書類での情報管理とは大きな違いです。

たとえば、利用者の「特定の活動」や「排泄状況」などを一年間さかのぼって見たい時は、システム上の「特定の活動」や「排泄状況」の欄を選択し、日時指定をすればその項目だけを時系列で情報取得することができます。

書類での作成の手間、過去をさかのぼって情報取得する手間が大いに省けるのですから、介護士の負担は大変削減されます。

 

介護士にとってメリットしかないと思われる記録業務の電子化ですが、中年介護士が電子化に不慣れなことや導入コストなどの課題もあり、導入に足踏みをしている施設もあります。

しかし、介護士の負担軽減のために、電子化への移行は進んできていますから、パソコンに不慣れな介護士も少しずつパソコンに慣れ、介護記録の電子化へ対応できるようにしていく必要があります。