勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の賃上げは、あまり期待できない!?

介護士賃上げ
勤続10年以上の介護福祉士に月8万円の賃上げを行うと、閣議決定されました。介護士には明るいニュースかと思いきや、これは手放しで喜んでいられません。月8万円の支給には厳しい条件が存在するのです。そこで今回は、このニュースの実態、どういった人が支給要件を満たすのかなどを見ていきたいと思います。

目次

  1. 【1】毎月8万円の賃上げとは何か?

  2. 【2】なぜ介護士の待遇改善が検討されるのか?

  3. 【3】今回の待遇改善の事情とは?

  4. 【4】賃上げ対象者はほとんどいない!?

  5. 【5】経験がステップアップへの橋!

毎月8万円の賃上げとは何か?

介護分野の人手不足解消のため、政府は介護士の待遇改善に現在までに取り組んでいます。賃金の改善として、2009年度を始めとして2017年度までに計4回の介護報酬改定が実施されました。改定によって、合計月額5.3万円に相当する改善が行われています(全てが個人給与に反映されているわけではありません)。

人口数がかなりの数になる団塊世代が2025年までに全員75歳以上になることを考えると、要介護状態の高齢者を支える介護士の需要が増加します。すると、そこに対応可能な介護士の確保が求められるようになります。

そのため、政府は介護人材確保として「さらなる処遇改善策」を盛り込みました。具体的なものとして、以下の処遇改善を推進しています。「勤続年数10年以上の介護福祉士の賃金を、月額平均8万円引き上げられる程度の財源」(税金から徴収した1000億円程度)を用意し、「経験・技能のある職員の賃金を上げる」というもの。

これは「介護職員としてのキャリアパス」を持ちやすくするというものです。この施策は、「消費税率10%への引き上げに伴う介護報酬改定」の中で制度化され、2019年10月から実施されます。

なぜ介護士の待遇改善が検討されるのか?

介護士賃上げ

現在、介護施設介護員の月給は21万8,900円、ホームヘルパーは21万8,200円と全産業の平均より約10万円低い状況です(厚生労働省より)。政府は介護スキルと経験を要する福祉人材に処遇改善をしたい考えを持っており、勤続10年以上の介護福祉士には月額8万円の賃上げを行う意向を発表したのです。

現政権は「介護離職ゼロ」を掲げているため、その方針に合わせて今回の賃上げに踏み切ったようです。

 政府は、介護福祉士を増員して介護離職を防ぎたい

月額8万円の賃上げに至ったのは、現在、問題となっている介護離職が理由として考えられます。年間の介護離職者は10万人にものぼり、そのうち女性は約8割にもなります。

主な介護離職者は50代~60代前半で、親が後期高齢者にあたる世代です。親の介護と自身の仕事で心身共に限界となり、介護離職を選択せざるを得ないといえるでしょう。

そして現在は、高齢者施設は高齢者を受け入れるベッドはたくさんありますが、介護士不足により運営規模を縮小せざるを得ない状況にあります。

そういった現状から、介護福祉士の待遇改善が行われ、介護士人口の増加によって、高齢者の介護施設への受け入れが改善されることを期待しています。

その結果、高齢者と家族は、仕事と介護の両立ができるようになり、介護離職が減少することになると考えられています。増加する要介護高齢者への対策として、介護福祉士の待遇改善は急がなければならない政府の課題です。

今回の待遇改善の事情とは?

介護士の数が減少している背景に加えて、国家資格の「介護福祉士」の数そのものの伸び悩みが論点として挙げられます。

2015年の時点では、介護福祉士の登録者数は139万8,315人です。にもかかわらず、実際に介護士として勤務している人は78万2,930人です。せっかく資格を取得したにもかかわらず、約4割の人は、介護の仕事についていません。

介護福祉士の登録者数と従事者数の乖離は時の経過と共に広がりを見せていますが、これには資格を取ったものの、介護福祉士の待遇に魅力を感じないために起こる現象であると考えられます。

2016年度の介護福祉士試験受験者数は、7万6,323人ですが、これは前年度の約半分という数字です。介護福祉士に魅力を感じなくなる風潮がある中で、介護福祉士試験の受験資格として実務者研修450時間受講が必須になったため、受験者がさらに減少するという事態になってしまいました。

受験のハードルは高くなる一方ですし、資格取得しても手当がそこまで出るわけでもありません。資格がなくても介護士として働くことは可能ですし、介護福祉士自体の魅力はますます低下しつつあります。

そういった中で専門知識を持ち、現場でリーダーとして指示を出す介護福祉士が不足しつつあることも悩ましい問題です。現場で10年以上勤務する介護福祉士を厚遇することにより、介護福祉士の待遇改善のイメージを図りたい政府の思惑が見え隠れします。

賃上げ対象者はほとんどいない!?

今回の賃上げは、1,000億円の税金を財源として行われる予定ですが、介護福祉士の給与を月8万円も上げるこの政策は、手放しで喜ぶことはできず、問題点も多いです。

一番の問題は、この賃上げの対象者となり、政策の恩恵に預かる介護士はほとんどいないという実態です。というのも、介護福祉士の平均勤続年数は6年で、勤続10年の介護福祉士は圧倒的に少ないというのが真実だからです(厚生労働省調べ)。

また、8万円の支給額全てが介護福祉士に支給される保証は全くありません。この月8万円の賃上げの仕組みですが、国から支給されたお金はまず介護事業所に入ります。そして、介護士に支給されるべきお金は、事業所の判断で各介護福祉士にどの程度の賃上げを行うかが決定されるのです。

つまり、給料が上がるか上がらないかは、事業所の判断によるところが大きいですし、事業所が介護士にお金を支給せずに設備投資の回収や他の経費に充ててしまうことも充分考えられます。となれば、介護士が恩恵を受けられるとは考えにくく、介護士の人材流出や人材増加への効果は期待できにくくなります。

もっと介護士全体に支給される制度が必要!?

今後の40万人ほどの介護士の不足を補うためには、介護業界自体に人を引き付ける魅力的なものがなければなりません。今回の月8万円の賃上げは、勤続年数10年以上の人が対象ですから、施設の中心的人物である介護福祉士の資格を持っている人(サービス提供責任者やフロアリーダーになる者が多いと思われます)の給与だけが高くなることになります(実際の支給額の采配は事業所ですが)。

やはり、一部の人だけではなく、介護士全体に賃上げがなされないと介護士としての魅力は上がらないように思われます。介護士を魅力的な職業にするには、今回のように給与を高くすれば即効性があります。様々考えると、やはり、勤続年数10年以上の者のみ支給されるという条件は厳しいでしょう。

経験がステップアップへの橋!

介護士賃上げ

介護士の待遇改善として期待される月8万円の賃上げですが、実際は各事業所の判断で支給額が決まりますし、施設の経営状況が悪ければ経費に充てられるでしょうから、あまり期待できるものではありません。極めつけは、同じ施設に10年以上勤務していなければならないため、該当者があまりいないということです。

しかし、介護士への待遇改善は少しずつ確実に進んでいっているため、将来を考え、スキルアップを図り、介護士としての経験を積んで置くことが大切なことだと思われます。