職場の人間関係に悩んで離職を選ぶ介護士は多い
介護士が職場を離れる理由というと、「低賃金」や「過酷な労働環境」を想像する方が多いのではないでしょうか
社会福祉振興・試験センターが平成27年度に調査した「社会福祉士・介護福祉士就労状況調査」によると、介護福祉士の「前の職場をやめた理由として最も大きな理由」は「法人・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」が12.2%とトップ。
次いで「職場の人間関係に問題があった」が9.3%と、低賃金や労働環境よりも「人間関係に関する問題」が原因で退職を選んでいる人が多いのがわかります。
参考: http://www.sssc.or.jp/touroku/results/pdf/h27/results_sk_h27.pdf
介護士が抱えやすい人間関係の悩み3選
職場の人間関係が思うようにいかず、退職を選んでしまうケースはどこの業界でもあるもの。ですが、とりわけ介護職にそのケースが多い理由はいったいなぜでしょうか。介護士が抱えやすい人間関係の悩みには次のようなものがあります。
1.ベテラン介護士との意見の食い違い
介護は、人が人をケアする仕事。手順や仕事の流れこそ大まかに決まっていても、具体的なケアのやり方は人によって違いが出やすいものです。施設で明確にケアの方針が決まっていれば問題になることは少ないのですが、「ベテラン介護士のやりかたに合わせればいい」と消極的な体質の施設も少なからずあります。
そういった施設の場合、ベテラン介護士の発言力が強いため、意見が合わなかったり、そりが合わなかったりすることで、「同僚介護士の輪の中になじめない」という状況に追い込まれやすいという特徴があります。
人材不足が原因で、施設の運営方針すらもひとりの介護士に依存してしまいやすい環境ゆえの弊害ともいえるかもしれません。
2.扱いにくい「年下上司」や「年上部下」
他の職業よりも幅広い年齢層の人が働いている介護現場。新卒で介護職に就く若い介護士もいれば、「子育てが落ち着いたから」と介護の仕事をはじめる中年の介護士もいます。
そのため、他の業界よりも「年上の後輩」や「年上の部下」といった関係になりやすく、お互いに扱いにくく感じてしまうことがあるようです。
3.職場内いじめが起こりやすい環境が整っている
残念ながら、どこの業界にも少なからず「職場内いじめ」はあるもの。ですが、ひとりの要介護者をチームで介護するという性質を持つ介護の仕事は、とりわけ「新人いじめ」が起こりやすい環境にあるといえます。
介護の仕事では、介護士同士はもちろん、さまざまなスタッフと連携をはかりながらケアにあたります。右も左もわからない新人は足手まといになってしまうことが多いため、チームから「どうしてあの人を採用したのだろう」といった不満があがるのは想像にたやすいのではないでしょうか。
きちんと研修を行ってから入職する体制が整っていれば即戦力として動くこともできますが、人員に余裕がない施設では十分な研修もないままいきなり現場に放り込まれるケースが少なくありません。
研修体制が整っておらず、肉体的にも精神的にも余裕のない環境でのチーム介護では「使えない人は排除したほうが要介護者のためになるのでは」といった正義感が働きやすく、これがいじめにつながる原因となりやすいのです。
職場の人間関係に悩んだらどうする?
では、もしも職場の人間関係に悩む当事者となってしまった場合、どのように行動すればいいのでしょうか。
「課題の分離」をしてみよう
まずは、「人間関係で悩んでいる」というところから一歩進んで、具体的にどのようなことに頭を抱えているか整理し、「自分の力で解決できる部分」と「自分の力では解決できない部分」に仕分けてみましょう。
たとえば「同僚の介護士にあいさつをしても無視されてしまう」といった悩みは、自分の力だけでは解決することができません。
ですが一方で、「仕事を教えてもらえない」といった悩みは、自ら学んでいく姿勢をつくることで改善していくことができるかもしれません。
漠然と悩むのではなく、悩みを分解し、まず自分の力で改善できそうな部分に力を注ぐよう切り替えます。
これは、心理学者であるアドラーが提唱している「課題の分離」と呼ばれる手法です。
上司や施設長に相談をもちかけてみる
人間関係でこじれてしまっている相手との関係が改善せず、業務に支障をきたしている場合は、チーム長や施設長、フロアリーダーなど、公平な判断ができるポジションの第三者に相談をもちかけてみましょう
このとき、大切なのは悪口にならないようにすること。
「こんなことをされて辛い」と感情的になるのではなく、「どのように業務に悪影響を及ぼしているか」といった切り口で相談するようにしたいですね。
職場にしがみつく必要があるか考えてみよう
職場の人間関係に悩んでしまって苦しいときは、その職場に居続ける理由があるかどうか今一度考えてみることも大切です。
たとえば、「職員とはうまくいかないけれど入居者の方との関係は良好で、看取る日までお世話をしたい」「人間関係は良くないものの学ぶところは多いので、スキルアップのためにも頑張りたい」など、明確な理由がある場合は働き続ける理由があるといえるかもしれません。
ですが、「いじめが原因で逃げたと思われたくない」「退職するといいにくい」といった理由であれば、次の職場を探したほうが賢明といえます。
いくら介護の仕事を頑張りたくても、思い悩むあまりに心に支障をきたして働けなくなってしまうようでは本末転倒です。
次こそは!人間関係で失敗しない施設選びのコツ
人間関係が原因で退職した場合、「次もまた人間関係がうまくいかなかったら…」といった不安を抱く人は多いものです。人間関係で失敗しない施設を選ぶコツをレクチャーします。
運営母体が大きい施設を狙う
大手法人が運営する施設の場合、パワハラ問題を深刻に受け止め、きちんと指導していく体制が整っているケースが多いため、人間関係の不和が少ないという魅力があります。また、大手になるほど運営方針が画一化されており、研修制度も充実していることが多いので即戦力になりやすく、人間関係もぎすぎすしにくいというメリットもあります。
介護職専門の転職サイトに登録して離職率ベースに転職活動を行う
施設の離職率や離職者数といったデータは公にされていないことがほとんどですが、介護職専門の転職サイトに登録し、コーディネーターを通じて転職活動を行うことで「離職率の低い施設」を紹介してもらうことができます。
また、給与や待遇、通勤時間などの要望を伝えることで条件にマッチした転職先を紹介してくれるので、転職活動に割かなければいけない時間を抑えることができるのも転職サイトの強みです。
「人間関係に悩みながらも、退職には踏み切れない…」という人であっても、在職中に転職サイトに登録し、どのような求人があるか紹介を受けてみることで、パッと視野が広がるかもしれません。