「介護職は離職率が高い」という話を耳にしたことはありませんか。肉体労働や夜間勤務も多く、過酷そうなイメージを持たれがちな介護職ですが、実は他業種と比較してずば抜けて離職率が高いというわけではありません。
とはいえ、「今の職場から離れたい」と思う方は少なからずいるものです。いったいどんな不満や悩みを抱えて、退職を選ぶのでしょうか。
何が原因に?介護職の方の退職を決めたきっかけは…
「新しい職場でキャリアアップしたい」といった前向きな理由で転職に踏み切る方もいる一方で、「もう介護やめたい…」と、介護の仕事そのものから離れることを検討するほど追い詰められてしまう方もいます。介護職の方が退職を決めたきっかけには、いったいどんなものが挙げられるのでしょうか。
退職理由1位は「職場での人間関係」
公益財団法人介護労働安定センターが行った「平成25年度介護労働実態調査」によると、介護職の方が退職を決めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」。退職理由の四分の一を占める結果となりました。
介護職の方は、利用者の方から「暴言を吐かれたり、理不尽な暴力をふるわれたことがある」という経験がある方も多いのではないでしょうか。認知症などをきっかけに、暴言や暴力行為が出てしまう方というのは少なからずいるものです。暴力をふるわれても、笑顔で対応するのは簡単なことではありません。そのストレスははかり知れないものといえるでしょう。
職員同士のトラブルも…
それから、職員同士のトラブルが原因で職場を離れる方も少なくありません。介護の現場は過酷です。忙しさからコミュニケーション不足となって、意思疎通がうまくはかれずすれ違ったり、クレームが多く気難しい入居者をつい押し付け合ってしまったり…。その理由はさまざまですが、職場での人間関係に疲弊したことを退職理由に挙げる人方介護業界ではとても多いという実情があります。
「事業所の運営方針と合わない」も大きな不満に
調査の結果、退職理由として「職場の人間関係」に次いで多かったのが「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」というものでした。
介護業界はほかの業界とくらべて、大きな法人が全国にチェーン展開しているケースは比較的少なく、事業所や施設単位で運営方針や理念が定められているケースがほとんどです。利用者とのかかわり方なども施設によって方針がありますので、「自分の望んだ介護が実現できない」という歯がゆさから、施設に不満を持つ方も少なくないようです。
「収入面での不安」もやはり上位に…
介護職といえば低賃金というイメージを抱いている方も少なからずいるのではないでしょうか。調査の結果を見てみると、「介護の仕事をしていくうえで収入面に不満を抱き、退職を決意した方」はおよそ17.6パーセント。結婚をして、家族を養うために退職をしたり、昇給の余地があるのか悩んだ末に他業種への転職を選んだり…と、収入への不安から転職を決意する方は後を絶ちません。
とはいえ近年では、「介護職員処遇改善加算」なども整備され、国をあげて介護職員の労働改善が行われるようになってきました。今後はますます改善されていく見込みではありますが、職員の賃上げやキャリアアップに対する意識は、施設によって大きく差があります。労働環境改善にきちんと取り組んでいる施設を見つけることが、介護職員の収入面での不安や不満を解決する糸口といえるでしょう。
「妊娠や出産」をきっかけに離職する人も
そのほかの退職理由として挙げられるのが、「妊娠や出産を機に介護現場を離れたい」というものです。移乗(ベッドから車いすなどに利用者を移す行為)や着替えの介助、排せつや入浴の介助など、体を酷使する業務が多い介護の仕事。当たり前のことですが、重いものを持つべきではないとされる妊娠中は、業務の一部が制限されてしまいます。
産休を取得できる職場もたくさんありますが、妊娠中では携われない業務が多いため、産休取得までのあいだに居心地が悪くなって辞めてしまう…という方が多いのも、介護施設の特徴といえるかもしれません。
介護施設?それとも異業種?介護の転職を考えるなら…
勤めていた介護施設を辞める決意をしたら、まず考えるのは「次はいったいどんなところで働くか」ということではないでしょうか。介護職員として、また介護施設を探すか。それとも思い切って、他業界への転職にチャレンジするか…。
他業界への転職にチャレンジする方もいますが、介護の資格や経験が活かせる職場を探すのは難しく、転職活動は難航する傾向にあります。未経験としてスタートしなければならないため、収入がダウンしてしまうことも考えられますので、他業界への転職は慎重に検討したいものです。
では、また介護業界で働く場合、転職時にどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
介護の転職を成功させるコツ
転職を決意した介護福祉士が転職を考える場合、やはり真っ先に考えるべきは同じ介護業界での転職です。取得した資格や現場で培った経験は財産ですから、経験はあればあるほど転職を有利に進められる可能性がアップします。先述したとおり、介護の現場は施設や事業所単位で運営方針や労働環境に大きく差があります。同じ地域の有料老人ホームに就職した場合でも、施設や事業所によって運営方針や労働環境が大きく異なるので、きちんと見極めていくことが大切です。
まずは、自分のキャリアビジョンを描いてみましょう。利用者の方々とどんなふうに向き合いたいか、理想的な介護方針はどんなものか考え、どんな介護をしたいか改めて考えてみてから転職活動をスタートすることが、「事業所の運営方針とあわなかった」というすれ違いをなくすコツです。とはいえ、運営方針や労働環境などの実態を個人で調べるのは意外と難しいもの。そんなときは介護職専門の転職サイトに登録し、エージェントのアドバイスを受けるとよりスムーズに転職活動を進められるかもしれません。