地域包括ケアシステム~ 高齢者ケアの新しい形~

地域包括ケアセンター
超高齢社会を支える政策の一つとして「地域包括ケアシステム」の構築が急がれています。システム導入の背景と内容、課題は何でしょうか。

目次

  1. 【1】地域包括ケアシステムとは?その背景と内容

    1. 1.地域包括ケアシステム誕生の背景

    2. 2.地域包括ケアシステムは「市区町村」が作る

  2. 【2】地域包括ケアシステムの5つの構成要素

    1. 1.「住まい」

    2. 2.「医療」「介護」「保健・福祉」

    3. 3.「介護予防」

  3. 【3】自助・互助・共助・公助という概念を組み合わせる

    1. 1.「自助」

    2. 2.「互助」

    3. 3.「公助」

    4. 4.「自助」「互助」の拡大が必要とされている

  4. 【4】まとめ

地域包括ケアシステムとは?その背景と内容

地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で最期まで生活を続けること前提とした包括的なケアシステムのことで、高齢者の尊厳を保持しながら、その自立生活を支援することを目的としています。なぜこのようなシステムが必要となったのでしょうか。また、どのようなシステムなのでしょうか。

地域包括ケアシステム誕生の背景

厚生労働省のデータによると、2018年現在、65歳以上の人口が国民の4人に1人(約3000万人)となっており、2042年には約3900万人とピークを迎えることが推計され、そのことよって起きる大きな問題が2点あります。

・超高齢社会へ進むことによって高齢者への社会保障費が増大し、加えて少子化の影響で税収の減少し財源の確保が難しくなる。

・介護や医療支援を必要とする高齢者が増え続けているにもかかわらず、医療や介護施設の大幅な新設・増設には限界があり、介護ケアと医療ケアの供給が今後さらに不足することが予想される。

以上の主な問題に対応するため、

・高齢者の介護予防を促進し自立生活を支援していくこと。

・入所施設などの内部完結型ケアから、自宅等を中心に地域で高齢者を支えていく地域完結型ケアに移行していくこと。

が求められるようになりました。厚生労働省は、「団塊の世代」の全ての人が75歳を迎える2025年をめどに、地域の包括的な支援・サービスの提供体制=地域包括ケアシステムの構築を推進しているのです。

地域包括ケアシステムは「市区町村」が作る

地域包括ケアシステムの特徴は、システムの構築を担っているのは市区町村の各自治体だという点です。2011年に改正された「介護保険法」の条文に、「自治体が地域包括ケアシステム推進の義務を担う」と明記されました。全国一律にではなく、その地域の特性に合わせて自治体ベースで地域包括ケアシステムを構築し、軌道に乗せていくことが求められています。自治体ベースといっても、実際の施策には市役所などの行政・民間企業・ボランティアなど、官民の区別なく様々な団体と人材が関わっています。

地域包括ケアシステムの5つの構成要素

地域包括ケアセンター

地域包括ケアシステムは、高齢者の住む地域における「住まい」「介護予防」「医療」「介護」「保健・福祉」支援を5つの構成要素として、支援が必要な高齢者に、それらを一体的に提供できるように構成されています。ここでいう「地域」とは、高齢者の住まいからおおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏を指します。

地域包括ケアシステムの「住まい」「介護予防」「医療」「介護」「保健・福祉」の構成関係は、よく植木鉢の図で例えられます。植木鉢には「鉢」と「土」が用意され、植物である「葉」が育てられています。

「住まい」

まず、全体を支え「鉢」の役割をするものが高齢者の「住まい」です。「住まい」は、自宅やサービス付き高齢者向け住宅になり、地域包括ケアシステムの土台となります。生活の基盤となる必要な住まいが整備され、本人の希望と経済力にかなった住まい方が確保されていることがシステム構築の前提となります。

「医療」「介護」「保健・福祉」

植木鉢で育てられる植物の「葉」に例えられるものが、「医療」「介護」「保健・福祉」の構成要素になります。具体的には、在宅医療、訪問看護、リハビリテーション、各種介護サービス、保健指導など、今後の高齢者ケアを支えていく専門サービスになります。これらを担うのは医師・看護師・介護スタッフ・保健師などの専門職ですが、今後の人口減少社会においては人材の確保・育成が無限に出来るわけではありません。

「介護予防」

そして、植木鉢の養分を湛える「土」に例えられるものが「介護予防」です。介護支援が必要となる状態に至る前に、自己管理のもと健康を維持する「介護予防」に加えて、老人会・自治会などで高齢者の活動できる場を提供する、民間企業のサービスを利用して食事の準備など日常生活の負担を軽減する、近隣住民が高齢者へ声掛け、見回りをするなどの生活支援も「介護予防」に含まれます。

この「介護予防」が植木鉢の「葉」を育てる「土」となり、この「土」が豊かでないと、いずれ「葉」である専門職のサービスが枯渇してしまうことを植木鉢の図は表しており、逆に「土」が豊かになる=高齢者の自立生活や健康寿命が長くなることによって、「葉」も豊かになっていくことを示唆しているのです。

自助・互助・共助・公助という概念を組み合わせる

地域包括ケアシステムの構築を考える上で、自助・互助・共助・公助という概念について理解しなければなりません。

「自助」

自分のことを自分でする、という以下のような取り組みです。

・自分の健康管理と介護予防

・市場サービスの購入

・介護保険、医療保険の自己負担

「互助」

お互いに支え合うという意味で、費用負担が制度的に保障されていない助け合いのことです。主に地域住民の自活的な活動によって支えられています。

・地域のボランティア活動

・老人クラブ、町内会、趣味サークルなどの活動

・住民同士の助け合い

 

「共助」

制度化された相互扶助のことです。

・医療・年金・介護保険、社会保険制度による負担と給付

「公助」

「自助」「互助」「共助」ではカバーできないものに対応するための社会福祉制度のことで、税による公の負担で成り立っています。

・高齢者福祉事業

・生活保護

・人権擁護・虐待対策

地域包括ケアシステムでは、地域の特性とニーズに合わせてこれら4つの活動を組み合わせて連携させ、発展させていくことが求められています。

「自助」「互助」の拡大が必要とされている

働く世代が減少し、高齢者への社会保障費の財源確保が難しいことから、「共助」「公助」については大幅な拡充が難しくなっています。また、高齢者の一人暮らしや高齢者のみ世帯の増加などから、「自助」「互助」の果たす役割や範囲を広げ大きくしていくことが期待されています。

ただ、地域の特性から「自助」「互助」の拡充度合いに違いが見られるだろうと考えられています。都市部では核家族化、単身世帯が多いこと、地域住民同士の繋がりが薄いことから、「互助」の強化が難しい一方、市場サービスが行き届き充実しているので「自助」によるサービス購入が可能になります。反対に、都市部以外の町村部は民間市場が限定的ですが、地域の繋がりが盛んであることから「互助」の役割を大きくすることが期待されています。

まとめ

2025年までにある程度の構築の完成を目指している地域包括ケアシステムですが、解決するべき問題点がいくつか提唱されています。

・「医療」「介護」の連携強化

・地域包括ケアシステムの地域格差

これらの問題を解決するために、医療と介護の接点者である地域包括ケアセンターの発展及びケアマネージャーの育成に取り組むことが重要視されています。

また、ケアシステムの地域格差によって「住み慣れた地域で」という前提から外れて、より良いサービスが受けられる地域へ高齢者が転居してしまう事態になることも考えられます。各自治体は、地域ごとの財源・人材の違い、高齢化率などの色々な事情に合わせて、介護事業者・医療機関・地域ボランティア・NPOなどの各関係者の合意のもと、その地域の魅力ある地域包括ケアシステムを構築することが期待されています。