全ての人に「普通に生活する」権利がある~ノーマライゼーションとは~

ノーマライゼーション
ノーマライゼーションとは、1960年代に北欧で生まれた社会福祉をめぐる社会理念の1つで、「障害者も、健常者と同様の生活が出来る様に支援するべき」という考え方のことを指しています。

目次

  1. 【1】ノーマライゼーションとは

  2. 【2】ノーマライゼーションが生まれた背景

  3. 【3】ベンクト・ニィリエによりノーマライゼーションが広まる

  4. 【4】ノーマライゼーションの8つの原則

  5. 【5】誤解されがちなノーマライゼーション

  6. 【6】まとめ

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションとは、直訳すると①違いを吸収して全体を均一化すること②障害をもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方といった意味がありますが、ここでは②についての説明を行っていきます。

ノーマライゼーションとは、「障害者が、障害があるからといって特別視されることなく、障害のあるなしに関係なく平等にひとりの生活者として、地域社会で暮らしていけるようにするべきだという考え方」のことを指しています。この考え方は現在世界中で取り入れられており、日本でも障害者福祉法の根本にもなっています。

第二次世界大戦後の北欧で生まれたノーマライゼーションという考え方ですが、現在ではその対象が障害者だけでなく、高齢者、社会的マイノリティにも広がってきています。

ノーマライゼーションが生まれた背景

ノーマライゼーションの思想の源流がある1950年代のデンマークでは、障害児・者は巨大施設に収容し、終生一般社会と隔離して保護をするという政策がとられていました。障害者の方は自由に外にでることもできず、社会から隔離された状態で生活を送っていましたが、それを見た社会運動家のバンク・ミケルセンはその現状に疑問を持ちました。以前、ナチスの強制収容所に収容されていた経験もあるミケルセンは、1951年に発足した知的障害者の「親の会」の活動に共鳴し、「ノーマライゼーション」というスローガンが法律として実現するように尽力し始めたのが始まりであると言われています。

ノーマライゼーションは、知的障害者を障害のない一般の人間と同じに引き上げようとする(ノーマルにする)のではなく、彼等を障害と共に受容し、彼等に普通の生活条件を提供するという画期的な考え方でした。例え重度の障害を持っていたとしても、その方たちには他の人と同様の権利を持つ1人の人間なのだということを説き、そこからミケルセンは「ノーマライゼーションの父」と呼ばれるようになりました。そして、ミケルセンの活躍もあり1959年に世界で初めて「ノーマライゼーション」という言葉が用いられた「知的障害者福祉法」がデンマークで制定されました。

ベンクト・ニィリエによりノーマライゼーションが広まる

ノーマライゼーションという考え方が生まれた後、1960年代にその理念はスウェーデンに広まりました。そして1963年、FUB(スウェーデン知的障害者育成会)のオンブズマン(国民に代わって行政活動を監視し、また国民からの行政機関に対する苦情を処理する者)であり、「ノーマライゼーションの育ての父」と呼ばれるベンクト・ニィリエがノーマライゼーションの考え方を整理し、「ノーマライゼーションの原理」として成文化しました。その中でニィリエは、「すべての知的障害者の日常生活様式や条件を、社会の普通の環境や生活方法に可能な限り近づけることを意味する」と定義しています。

ニィリエはFUBの事務局員として障害を持つ方の処遇の改善を求めるために、スウェーデン各地の障害者施設を精力的に訪問しました。そこでニィリエは障害者の方が抱える様々な困難に直面し、そこでノーマルな生活条件の重要性を悟ったと言われています。その後、ニィリエはミケルセンとも親交を深め、彼の考え方に共感し、ノーマライゼーションを概念化していったのです。

ニィリエは前述の定義を北米に紹介すると、さらには全世界へとこの考え方は広まりヨーロッパや日本にも知られていくと共に、1970 年代から 80 年代にかけて、国連をはじめとする国際機関が人権について見直す取り組みなどを起こす契機となりました。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションの8つの原則

ニィリエは障害をABCの三層構造によって捉えました。

A.知的障害者の持っている認知、適応行動、学習のそれぞれの障害

B.社会が作り出した環境や生活状況からくる障害、親や一般の人の理解の無い態度からくる障害

C.知的障害であることの自己認識

その上で、ニィリエは「Bは完全に取り除くことができ、それを取り除くことによって残りの2つの障害を克服することができる」と主張しました。そしてBの条件、つまり社会的環境条件を改善していくために8つの原則を示しています。

①ノーマルな1日のリズム

1つ目は、障害のある人でも、ない人と同じような一日の生活のリズムが送れるような環境をつくりだすべきという考えです。

たとえ重い障害があっても朝ベッドから起き、洋服を着て、家から出て、学校、もしくは勤めに行く、つまり、ずっと家にいるだけではありません。朝にはこれからの一日を思い、夕方には自分のやり遂げたことをふりかえります。

障害があるという理由だけで普通の時間に食事をできなかったり、不必要に早く就寝したりすることなく、誰もが各々のリズムで生活できる社会を目指します。

②ノーマルな1週間のリズム

2つ目は、障害のある人でも地域社会におけるいくつかの異なるグループに所属し、日々の生活に刺激があることが自然であるという考え方です。

多くの人は、平日は学校や職場、自宅など様々な場所でそれぞれ活動しています。それ以外には別のところに遊びに行ったり、様々な方法で余暇を過ごすこともあります。

③ノーマルな1年のリズム

3つ目は、障害の有無で四季の移り変わりを感じることができなかったり、1年を通した様々な行事に参加することができないということはあってはいけないという考え方です。これは、障害のある方が地域社会と関わっていく上でも大切です。

1年の中には、四季を通して変化する食事や行事、余暇活動などがあります。この季節の変化を感じて暮らしていくことで私たちは豊かに育てられていると言えるでしょう。

④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験

4つ目は、障害者のある人も誰もが同じような幼児期、学童期、成人期、高齢期というライフサイクルを経験できるようにしようという考え方です。

子どもの頃は親や友達と遊びに行き、青年期には髪型や音楽、異性に興味を持ち、大人になると、仕事やそれに対する責任が発生します。そして年をとると思い出や、経験から生まれた知恵に溢れます。

⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権

5つ目は、本人自身の選択や希望はできる限り、尊重されるべきという考え方です。そのためには、自分の意思や希望を上手く伝えられない人にも注意深く耳を傾け、その人の意志や要望を聞くことが重要です。

⑥その文化におけるノーマルな性的関係

6つ目は、男女を不必要に分離するのではなく、お互いに協力して生活していけるような環境を作るようにするという考え方です。

ノーマルな社会では、男性と女性が分けられることなく協力して生活しています。しかし、理由もなく男女が分けられて生活している施設があることも現状です。

⑦その社会におけるノーマルな経済水準とそれをえる権利

7つ目は、障害のある人も、社会に参加して、基本的な経済活動を行えるようにするべきという考え方です。そのためには、児童手当、老齢年金、最低賃金基準法のような保障を受け、経済的安定をはかる必要があります。

障害のある人も自分で自由に使えるお金があって、必要なものや好きなものが買えることは重要なことです。

⑧その地域におけるノーマルな環境形態と水準

8つ目は、障害者向けの施設をより一般的な施設に近づけていくべきであるという考え方です。障害のある人を対象とする施設と一般市民を対象にする施設の設備のレベルが異なっていることがありますが、障害の有無により理由もなく施設の環境に差があるのは好ましくありません。

誤解されがちなノーマライゼーション

ノーマライゼーションは比較的分かりやすい考え方ですが、誤解を招きやすい点もあります。例えば、ノーマライゼーションは障害のある人を無理やり障害のない人に合わせるということではありません。そのため、障害のある人が快適に暮らしやすいようにするために必要としている支援は社会側がするべきものです。

また、ノーマライゼーションは別に完璧を目指しているものではなく、誰もが完璧に自立した生活ができるということは考えていません。そのため、一人ひとりの、障害や能力などに応じて最適な支援や環境を整えることが重要となってきます。

まとめ

障害のある方が快適に暮らしていく上で必要不可欠な考え方である“ノーマライゼーション”。その考え方は日本でも広く知られてきていますが、同時にまだ誤解などがあるのも事実です。ノーマライゼーションに関する正しい知識を身につけ、誰もが安心して生活をすることのできる社会を目指していきましょう。

介護ぷらす

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