健康寿命を延ばすために重要?”サルコペニア(身体機能低下)”と”フレイル(虚弱)”とは

サルコペニアとフレイル
高齢になるにつれて体力が落ちてきたり、食が細くなったり…そのような状況が続くことで要介護状態になりやすくなると言われています。健康な状態を維持するためには体力の低下や栄養不足を防ぐことが重要です。今回は、それらのことと関係の深い“サルコペニア(身体機能低下)”と“フレイル(虚弱)”についてご説明します。

目次

  1. 【1】超高齢社会の日本

  2. 【2】サルコペニアって?

  3. 【3】フレイルって?

  4. 【4】サルコペニア・フレイルの対処法

  5. 【5】サルコペニア・フレイルにならないために

  6. 【6】まとめ

超高齢社会の日本

日本は高齢社会となって久しく、高齢の方が以前と比べてより多くなってきています。そのような時代の中で、要支援・要介護の状態にならずに“健康寿命”を伸ばすことに注目が集まっています。

健康寿命とは、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間のことを指しています。現在、日本における平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性では約12と言われています。健康寿命を延ばすためには筋力の低下を防ぐことや、低栄養状態にならないようにすることは非常に大切です。そのためにも、これからご説明する“サルコペニア”や“フレイル”といった要素は重要になってきます。

人間は、歳を重ねるごとに徐々に心身の機能が低下していきます。近年、特に問題となっているのが“サルコペニア”“フレイル”。聞きなれない単語かもしれませんが、これらは老年症候群の1つで、地域高齢者の10~30%程度の有病(症)率と考えられています。

ではその、“サルコペニア”“フレイル”とは何なのか、さらにその予防法・対処法についてこれから詳しくご説明します。

サルコペニアって?

サルコペニアとは、ギリシャ語の「筋肉」を表す“サルコ(sarx)”と、「喪失」を表す“ペニア(penia)”を組み合わせた言葉で、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態のことをいいます。転倒・骨折、寝たきりなどの原因にもなり、ケガや生活の質の低下など、有害な事象を引き起こします。

 

サルコペニアの原因

サルコペニアの原因としては加齢や疾患などが挙げられますが、それ以外にも日常生活動作や疾患、栄養状態によっても起こります。

サルコペニアはその原因によって4つに分けられていて、

 

加齢性サルコペニア:加齢以外に明らかな原因がないもの

活動性サルコペニア:寝たきり、不活発な生活スタイル、無重力状態が原因となり得るもの

疾患に関連するサルコペニア:重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患に付随するもの

栄養に関するサルコペニア:吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用などに伴う、摂取エネルギーおよび/またはタンパク質の摂取力不足に起因するもの食欲不振をきたす薬物の使用が原因となるもの

 

というものがあります。

サルコペニアの診断基準

サルコペニアの診断基準は様々な種類がありますが、ヨーロッパのワーキンググループEuropean Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)による定義がよく使われています。腕と足の骨格筋の量が減少していることに加え、身体機能(歩行速度)の低下筋力(握力)の低下がある場合にサルコペニアと診断されています。

しかし、日本では日本人の高齢者に合ったサルコペニアの簡易基準案を国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSAが作成しています。これは、先に話したEWGSOPの診断基準が、欧米の高齢者の診断基準となっているためで、欧米の高齢者と日本の高齢者は同じ高齢者でも体格や生活習慣の違いがあり、適用が難しいためです。

その基準では、65歳以上の高齢者で、歩行速度が1m/秒(歩行速度の1m/秒は横断歩道を青信号のうちに渡り切ることのできる歩行速度)未満、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合で、さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿囲が30cm未満の場合にサルコペニアと診断されます。この基準では身長と体重を測ることができ、さらに握力系とメジャーとストップウォッチがあれば診断をすることができるので、比較的容易に行うことができるというメリットがあります。

フレイルって?

フレイルとは、海外の高齢者における医療の領域で使われているFrailty(フレイルティ)」のことを指しています。Frailtyを直訳すると、「虚弱」や「老衰」、「脆弱」といった言葉になります。つまり、フレイルとは「高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱になった状態」を指しています。

 

フレイルの原因

フレイルは、様々な加齢に伴う心身の変化と社会的・環境的な要因が組み合わさることによって起こります。身体的要因としては先ほど説明していたサルコペニア、精神的要因としてはうつや認知症、社会的要素としては孤独や引きこもりといったことがフレイルを引き起こす最も大きな要因となっています。

主な例としては以下のものが挙げられます。

 

・加齢による活動量の低下とそれに伴う他者との交流の減少

・身体機能の低下

・筋力の低下

・認知機能の低下

・疲れやすい

・低栄養

など

 

これらの要因の他にも、様々なものがあり、また、それは人によっても様々です。

フレイルの診断基準

米国老年医学会の評価法によると、以下のうち3つ以上に該当する方はフレイルであると言われています。

 

①1年間で4~5kgの体重減少

②疲れやすくなった

③筋力(握力)の低下

④歩行スピードの低下

⑤身体活動性の低下

 

この診断では、特に筋肉が重要であるとされています。それに加え、気力の低下などの精神的な変化や社会的なものも含まれるため、注意が必要です。

サルコペニアとフレイル

サルコペニア・フレイルの対処法

 サルコペニアになってしまったら

サルコペニアの治療には、主に運動療法・栄養療法の2つがあります。

①運動療法

サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量の低下と筋力(握力)低下、もしくは身体能力(歩行速度)の低下がみられることによって診断されます。そのため、筋肉量を増やし、筋力や身体能力を改善するために筋力トレーニングと低強度の有酸素運動が効果的であることが言われています。

運動習慣のない方がそのような運動を始めるのは少しハードルが高いように見えるかもしれませんが、毎日の生活の中で、散歩や筋力トレーニングを少しずつ行い、習慣化して継続していくことが大切です。

②栄養療法

骨格筋量、筋力、身体機能は、蛋白質の摂取量に深く関係しているため、たんぱく質をしっかりと摂ることが非常に重要です。高齢者は若い人に比べると蛋白質から筋肉を作る働きが弱いため、良質なたんぱく質を継続して摂ることが大事になってきます。

しかし、たんぱく質を摂りすぎると腎障害のリスクを高めるため、たんぱく質の制限がある方は気を付けましょう。

フレイルになってしまったら

フレイルの主な原因にサルコペニアと低栄養があげられます。そのため、フレイルになってしまったらその治療は基本的にはサルコペニアの場合とほとんど同じであると考えて大丈夫です。

サルコペニアの場合の運動療法に加えて、レジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける動作を繰り返し行う運動)を取り入れることも効果的です。スクワットや上体起こしなど、自分の出来る範囲から少しずつ行っていくようにしましょう。

サルコペニア・フレイルにならないために

サルコペニアとフレイル、それは要介護状態になってしまう大きな原因の1つです。なってしまってから対処するよりも、まずは自分がどんな状態なのか理解し、事前に予防することができたらいいですよね。

これから、サルコペニアとフレイルはどのように予防すればいいのかをご説明します。

持病のコントロールをする

高齢になると、糖尿病や高血圧をはじめとした持病のある方が多くいます。そのような場合は、まず持病をコントロールすることが重要です。

持病のコントロールがうまく出来ておらず、例えば身体が痛かったり、息が苦しかったりするとそれだけで動きたい気持ちもなくなってしまいます。

サルコペニア・フレイルを予防するためには活動性を上げることは重要ですが、活動性をあげるためにはまず病気や痛みのコントロールをしましょう。

運動療法と栄養療法

これらの2つの療法は、先ほどサルコペニア・フレイルになってしまった際の対処法でもあげましたが、内容としては基本的には変わりません。

先ほども説明したように、運動療法は個人に合ったものから始めることが大切です。あまり動けないうちはベッド上での運動→椅子での運動→スクワットなどの自重を使った運動といったように、運動強度は徐々に上げていきましょう。

筋力が低下している状態で、いきなり立ち上がったり、無理に歩行しようとすると転倒や骨折を起こす危険があるため、注意が必要です。

感染症の予防

高齢者は若い方に比べて免疫力が低下しているため、インフルエンザなどの感染症や肺炎にかかりやすいと言われています。特に、入院の原因として肺炎はとても多くなっており、そこから寝たきりになってしまう方も少なくありません。

そのため日頃からの栄養・運動療法で免疫力を少しでも高めるとともに、予防接種などで感染症を予防することも重要です。

まとめ

現在、高齢者に増えてきている「サルコペニア・フレイル」。要介護状態になる原因の1つとされているものですが、これは日頃から気を付けることで予防ができるものです。歳をとって運動をしなくなった、食が細くなったという方も多くいらっしゃるかもしれませんが、少しずつでもいいのでそれらのことに気を付けて、健康寿命を延ばすことができたらいいですよね。

介護ぷらす

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