高齢者の自立支援のインセンティブ交付金、現状は?

インセンティブ
高齢者の自立支援・重度化防止に注力する都道府県・市町村を評価し、その評価に基づいて交付されることが決定しているインセンティブ交付金。いったいどのようなものなのか、交付されるためにクリアすべき基準とはどのようなものなのか、詳しく解説します。

目次

  1. 【1】インセンティブとは?

  2. 【2】自立支援のインセンティブ交付金とは?

  3. 【3】交付金を支給されるためにクリアすべき基準とは?

  4. 【4】既に介護サービスの質の評価を行っている自治体も

  5. 【5】インセンティブ交付金の給付に向け、自治体の積極的な施策が期待される

インセンティブとは?

インセンティブの意味をご存知ですか?

インセンティブの意味は、

  1. やる気を起こさせるような刺激。動機付け。
  2. 値引き。奨励金。「インセンティブセール」
  3. 成果を上げた社員や販売店に通常の給料や手数料以外に特別に支給する報奨金。

などとされています。

(デジタル大辞泉:https://goo.gl/thj1ap)

自立支援のインセンティブ交付金とは?

平成29年の5月に行われた法改正によって、平成30年度から200億円の予算が組まれ、実施されることが決定した自立支援のインセンティブ交付金。

インセンティブの持つ意味から読み解くことができるのは、インセンティブ交付金は、自治体の高齢者の自立支援・重度化防止に対する取り組みに対して報奨金を設け、“頑張りを評価”するものであり、自立支援に対する取り組みを強化させるという目的を持っているものといえます。

現行の介護報酬は、要介護度が改善することによって報酬が低くなるというもの。報酬が低くなると事業所の収入が減少してしまうため、利用者の要介護度の改善への取り組みに対してディスインセンティブが生じているという指摘もされていました。介護保険関連の費用は、超高齢社会で介護を要する高齢者が増加するにつれて、右肩上がりとなっている状態であり、この現状を改善するために、自立支援のインセンティブ交付金の導入が決定されました。

インセンティブ

交付金を支給されるためにクリアすべき基準とは?

高齢者の自立支援・重度化防止に取り組んだ自治体に対して給付される自立支援インセンティブ交付金。交付の基準となる指標については、平成30年2月28日の介護保険最新情報vol.622で、市町村向け、都道府県向けにそれぞれの指標が周知されました。

市町村向けの指標

市町村向けの指標は、

  1. PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化に向けた体制等の構築
  2. 自立支援・重度化防止等に資する施策の推進
  3. 介護保険運営の安定化に資する施策の推進

という3つの柱から成り立っています。

  1. PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化に向けた体制等の構築

PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化に向けた体制等の構築の内容として、

  • 地域包括ケア「見える化」システムを活用し、地域の介護保険事業の特徴を把握しているか
  • 日常生活圏域ごとの65歳以上人口を把握しているか
  • 2025年度における将来の推計値を把握しているか
  • 介護保険事業の現状や将来推計に基づく目標の設定、施策を決定しているか

など8つの項目があります。

それぞれの項目で、基準をクリアしている場合10点・5点・2点の点数が加算されます。

  1. 自立支援・重度化防止等に資する施策の推進

自立支援・重度化防止等に資する施策の推進は、

  • 地域密着型サービス
  • 介護支援専門員・介護サービス事業所
  • 地域包括支援センター
  • 在宅医療・介護連携
  • 認知症総合支援
  • 介護予防/日常生活支援
  • 生活支援体制の整備
  • 要介護状態の維持・改善の状況等

の8つの分野に分かれ、それぞれさらに細かく項目が設けられています。

例えば、①の地域密着型サービスは、

  • 保険者の方針に沿った地域密着型サービスを図るため、保険者独自の取り組みを行っているか
  • 地域密着型サービス事業所の運営状況を踏まえて、必要な事項の検討がなされているか

等となっていて、②の介護支援専門員・介護サービス事業所は

  • 保険者としてケアマネジメントに関する基本方針を介護支援専門員に伝えているか
  • 介護サービス事業所の質の向上に向けて、テーマを設定した研修等を行っているか

など。

こちらも、基準をクリアしている場合には10点または5点、得点が加算されます。

  1. 介護保険運営の安定化に資する施策の推進

介護保険運営の安定化に資する施策の推進は、

  • 介護給付の適正化
  • 介護人材の確保

の2項目について、それぞれ細かい評価基準を設けています。この項目では、ケアプランの点検の実施や医療情報との突合・縦覧点検の有無、福祉用具の利用や住宅改修に関して専門職が関与する仕組みが設けられているかどうかをチェックします。

交付額の算定方法

市町村への交付額は、評価指標で加点された得点と第一号被保険者数を元に、算出されます。

各市町村の交付額=予算総額(※)×   (当該市町村の評価点数×当該市町村の第一号被保険者数)/(各市町村の評価点数×各市町村の第一号被保険者数の合計)

(※)予算規模は市町村分と都道府県分の合計で200億円。都道府県分が約10億円程度となっているため、市町村分は200億円からこの額を控除した額とされています。

都道府県向けの指標

都道府県向けの指標も大きく分けて3つ。

  1. 管内の市町村の介護保険事業に係るデータ分析等を踏まえた地域課題の把握と支援計画
  2. 自立支援・重度化防止等、保険給付の適正化事業等に係る保険者支援の事業内容
  3. 管内の市町村における評価指標の達成状況による評価

となっています。

評価内容としては、地域包括ケア「見える化」システムその他のデータを活用して、管内の市町村の地域分析を実施して、実情や課題を把握しているか、また、市町村の研修事業やアドバイザー派遣等を行っているか、リハビリテーション専門職等の人材支援を行っているか、などとなっています。

それぞれの項目についてクリアしている場合、10点または15点の得点が加算されます。

都道府県の交付額の算定方法

都道府県への交付額は、評価指標で加点された得点を基準として、算出されます。

各市町村の交付額=予算総額(※)×当該都道府県の評価点数/各都道府県の評価点数の合計

(※)都道府県の予算総額は約10億円程度。ただし、都道府県全体として所要額が予算を下回る場合は、減額することもある。

(参考サイト:http://www.care-mane.com/pdf/feature/q&a/vol622.pdf)

既に介護サービスの質の評価を行っている自治体も

高齢者の自立支援・重度化防止を目的としたインセンティブ交付金。東京都品川区や岡山県岡山市など、既に、介護サービスの質の評価を行っている自治体もあります。

東京都品川区の取り組み

東京都品川区では、要介護度改善ケア推奨事業として、品川区の施設サービスに参加する社会福祉法人等が運営する高齢者施設を対象に、サービスの質を評価して奨励金を支給しています。要介護度が一段階改善した場合に2万円の報奨金を支給する制度となっていて、平成25年度から事業を開始しています。

岡山県岡山市の取り組み

岡山県岡山市では、デイサービス改善インセンティブ事業として、通所介護のサービスを対象に、質の評価や利用者の状態の維持・改善に努めている事業所にインセンティブを付与しています。外部研修への参加状況や岡山市が主催する研修会への参加、認知症高齢者の受け入れ人数等を評価項目とし、上位10団体に10万円の報奨金を支給するこの事業は、平成26年度から開始されています。

インセンティブ交付金の給付に向け、自治体の積極的な施策が期待される

高齢者の自立支援を促すインセンティブ交付金。自立支援・重度化防止を図ることによって、介護費用の増加を抑える効果を期待して導入が決定された交付金ですが、評価基準をクリアすることによって給付額が決定する仕組みとなっているため、基準のクリアに向けて、今後、自治体の施策が積極的に進められていくことが期待されています。

介護ぷらす

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