生活機能向上連携加算「拡大」!対象になったサービスとは?
新たに「生活機能向上連携加算」が受けられる介護サービス
「生活機能向上連携加算」とは、訪問介護・通所介護などの介護サービスを提供する事業所が、外部のリハビリテーション事業所(訪問・通所リハビリテーション)と連携して、共同で利用者の「生活機能向上」に取り組んだ場合に「介護報酬」の加算が受けられる制度です。
今回の「介護報酬」改定により、今まで加算の対象だった「訪問介護」以外に、次に挙げる介護サービスでも加算が受けられるようになりました。
・通所介護(デイサービス)
・認知症対応型デイサービス
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・特定施設入居者生活介護(老人ホーム・ケアハウス)
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
このように、介護施設が新たに「生活機能向上連携加算」の対象になり、、以前から対象だった「訪問介護」についても「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「小規模多機能型居宅介護」のサービスで、「生活機能向上連携加算」が受けられるようになりました。
多くの介護サービスで加算が受けられるようになったことで、今後さらに様々な施設で、リハビリ等の「生活機能向上」プログラムが導入されていくことが考えられると思います。
なぜ今回「生活機能向上連携加算」が拡大された?
今回、「生活機能向上連結加算」の対象施設が拡大された大きな目的は、高齢者の『自立支援・重症化防止』です。
介護施設・介護職員はこれからますます不足することが予測されています。そのため、国は「施設から在宅へ」介護の形を変えていくことを推進しており、重度の介護状態になる前に「介護予防」をすることが必要だと考えています。
介護事業の利用者が、在宅で自立した生活を送れるようなサービスを提供している事業者には、『自立支援・重症化防止』に貢献したということで、「介護報酬」の加算うことを目的としています。
平成30年度「介護報酬」改定のねらいとは?
国のねらいは?平成30年度「改定」の目的
前回、平成27年度の改定では、「介護職員の処遇改善」と「中重度の要介護者・認知症高齢者への対応強化」に重点がおかれました。
今回、平成30年度の「介護報酬」改定では、以下の4つに重きが置かれました。
①「地域包括ケアシステム」の推進
②高齢者の「自立支援・重症化防止」
③多様な人材の確保と生産性の向上
④介護サービスの適正化
これら4点が、今回「介護報酬」を改定した国のねらいと同時に、国がかかげる『これからの介護ビジョン』と考えてよいと思います。
『これからの介護ビジョン』に沿った介護サービスには積極的に報酬の「加算」が行われ、逆にビジョンに沿うことが出来ない事業には、報酬の「減算」行われることになります。
「加算」「減算」で国の介護をコントロール?介護報酬のしくみ
「介護報酬」は、介護サービス事業者に支払われる料金(対価)です。
「介護報酬」の1割は利用者の負担で、のこりの9割は介護保険から支払われています。
事業者は、受け取った「介護報酬」で施設の運営を行い、スタッフのお給料を支払っています。
「介護報酬」=「基本報酬」+「加算(減算)」のしくみ
「介護報酬」には、事業形態によって決められている「基本報酬」があります。その「基本報酬」にプラスして、事業所が提供している各サービスに対して「加算(減算)」が行われ、報酬が上乗せされるシステムになっています。
「加算」をたくさん受けると、それだけ介護事業者の収入がアップすることになります。収入が増えれば、施設の運営に使えるお金が増えたり、スタッフの待遇を考える余裕ができたりします。
このため、事業者は「加算」を獲得してより多くの報酬をもらうために、「加算」が設定されたサービスを強化するように動きます。
反対に、「減算」を受ける事業は、ムダを省いて本当に必要なサービスだけに縮小するでしょう。
国は、3年ごとの介護報酬改定で「基本報酬」や「加算・減算」の項目をその都度調整し、国がこれから必要とする介護サービスがより強化されるように働きかけているのです。
これからの「介護報酬」はどうなる?見直される介護サービスとは?
平成30年度の「介護報酬」改定では、さまざまな介護サービスで報酬の再調整が行われました。どのようなサービスで報酬が増え、もしくは減ったのでしょうか?
今回の改定内容から、「介護報酬」が今後どのように変わっていくのかを考えていきたいと思います。
今回の改定で「加算」「減算」された介護サービス
先ほどお伝えした国の『これからの介護ビジョン』に沿って、今回見直されたのは主に以下の介護サービスです。
「加算」が拡大された介護サービスの例
・訪問看護…「看護体制強化加算」の強化
・認知症へのケア…「認知症専門ケア加算」をショートステイなどにも拡大
・見守りロボットの導入…「夜勤職員配置加算」条件を緩和(見守りロボットが人間の代わりになれるように条件を見直し)
「減算」された介護サービスの例
・訪問介護…「身体介護」「生活援助」のうち、「生活援助」の基本報酬を引き下げ
・大規模通所介護…利益率が高いため、「基本報酬」を引き下げ
訪問介護で「減算」となっているのは意外ですね。訪問介護でも、より必要性の高い「身体介護」サービスに力を入れていきたいということです。
これからの「介護報酬」のゆくえ
「現役世代の減少」「2025年に団塊の世代が後期高齢者に達する」などを背景として、ますます社会保障費の確保が難しい状況になっています。そのため、今後「介護報酬」は増えるどころか引き下げられていくだろうと予想されています。
今回、『在宅介護』の分野である訪問介護でも一部「減算」となったように、機能訓練を行わない介護サービスについては「基本報酬」を減算していくなど、より国が必要とする介護サービスに優先して報酬が発生するようになるでしょう。
まとめ
2025年、団塊の世代が後期高齢者に突入するまであと7年。政府はそれまでに「地域包括ケアシステム」の構築を目指していますが、その間にあと2回(2021、2024年)、再度「介護報酬」の改定が行われます。今回「生活機能向上連携加算」は拡大しましたが、「介護報酬」自体は今後ますます『適正化』が進み、次回の改定ではさらに踏み込んだ内容で介護サービスの「加算」「減算」が行われることが考えられます。今回「介護ロボット」の導入が促されたように、次の改定ではさらに人の手に代わるIT技術の導入が促進されることにも注目が集まっています。