ケースワークの母、メアリー・リッチモンドとは?

メアリー・リッチモンド のソーシャル・ケースワーク
生活を送るうえで何らかの問題や課題を抱える人に対して、問題が解決できるように支援を行う“ケースワーク”。そのケースワークを分析・体系化し、『ケースワークの母』と呼ばれているのがメアリー・リッチモンドです。いったいどのような人物であったのか、詳しくご紹介します。

目次

  1. 【1】ケースワークとは?

  2. 【2】メアリーリッチモンドってどんな人?

  3. 【3】慈善組織協会とは?

  4. 【4】『社会的診断論』

  5. 【5】『ソーシャルケースワークとは何か?』

  6. 【6】ケースワークの原点にあるリッチモンド

メアリー・リッチモンドという人物をご存知でしょうか?メアリー・リッチモンドは、何らかの問題や課題を抱える人が、問題を解決できるように支援を行う“ケースワーク”を科学的に分析し、『ケースワークの母』と呼ばれる人物です。ケースワークとは何か、そして、メアリー・リッチモンドはどのような人物であったのか、詳しくご紹介します。

ケースワークとは?

 ケースワークはソーシャル・ケースワークの略称。生活を送るうえで困難や課題を持つ人とその家族に対し、問題が解決できるように支援していく方法の1つで、日本語では個別援助技術と訳されます。

20世紀の初頭に、アメリカにおいて科学的に裏付けられ、社会事業が専門職化されました。

ケースワークという言葉を初めて使用したメアリー・リッチモンドは、『ソーシャル・ケースワークは、人間とその社会的環境との間に、個別的に、効果を意識して行う調整によって、その人間の人格を発達させる諸過程からなる』と定義しています。つまり、“ケースワークは生活を送るうえで何らかの問題を抱え、援助を必要としている人に対して、問題を解決する支援を行うなかで、パーソナリティの発達を図っていくこと”ということができます。

日本で実施されるようになったのは第二次世界大戦後。公的扶助・医療・司法・学校・家族ケースワークとさまざまな場面・分野で実践されてきましたが、ソーシャルワーカーに当たる社会福祉士の業務は、相談援助業務に限定されて行われています。

メアリーリッチモンドってどんな人?

メアリー・リッチモンドは、1861年にアメリカで誕生した人物。

1861年というと、南北戦争が行われていた時代で、人々は貧しい生活を送っていたころであり、メアリー・リッチモンドの両親や兄弟も、栄養失調や結核によって亡くなりました。両親が亡くなった後、リッチモンドは祖母に引き取られて育てられましたが、当時のアメリカでは義務教育が無かったことから、リッチモンドは11歳まで学校教育を受けず、書籍を読むことによって読み書きを習得します。ハイスクールに編入後、教職につくことを志したリッチモンドですが、中流階層出身であることから教職につくのを諦め、工場に就職します。

1889年にボルチモアの慈善組織協会で働きだしたリッチモンドは、友愛訪問活動に携わります。

この慈善組織協会での友愛訪問活動から、リッチモンドはソーシャルケースワークの基礎を築き、『ケースワークの母』として呼ばれるようになりました。

慈善組織協会とは?

慈善組織協会(COS)は英語で、charity organization society。

1869年にイギリスで始まりました。このころのイギリスは、資本主義が発展する中で貧富の差による貧困問題が深刻化していたころ。

貧困によって苦しむ人に対して、さまざまな慈善活動が個々で行われていましたが、この慈善活動をまとめて、調整する役割を果たしたのが慈善組織協会なんです。

この福祉協会の活動は、1877年にアメリカに伝わり、拡がっていきました。

当時、貧困は怠惰な性格や生活が原因にあるとされていたため、訪問することによって人格的な影響を与え、適切な救済が行われるように調整していくことが目的とされていましたが、リッチモンドは、自分の生い立ちから、貧困問題を解決するためには規則正しい生活の訓練を行うことだけでなく、社会的な環境や条件を変えることが必要であると考えていました。

また、1899年に発表した『貧困者への友愛訪問』という著書の中で、友愛訪問は“貧困者の家庭の喜びや悲しみ、意見、感情、そして人生全体に対する考え方に共感できるように身近に知ること”と定義しています。

 主な著書と、その内容とは?

リッチモンドは1899年に発表した『貧困者への友愛訪問』をはじめ、さまざまな著書を出版しています。その中でも有名なのは、1917年に出版した『社会的診断論』および1922年に出版した『ソーシャル・ケースワークとは何か?』だといわれ、ケースワークの基礎を築いた“ケースワークの母”と呼ばれています。

『社会的診断論』

1917年に出版された『社会的診断論』は、ケースワークの理論や方法を科学的に体系化し、専門的水準に高めたもの。当時の記録を医学や法学などさまざまな視点から分析し、対象者を個別の主体性を持った環境の中の人としてとらえることを唱え、ソーシャルワークの基本を確立しました。

この著書の中で、個人の改善と社会全体の改善は独立したものであるものの、社会の改良とソーシャル・ケースワークは共に進歩する必要があるとしています。

貧困問題を抱える利用者の社会的困難や社会的要求を把握するためには社会的証拠の収集が必要であるとしていて、この社会的証拠の収集は

  • 利用者との面接
  • 利用者の家族
  • 家族内外の資源

によって行うとしています。また、収集した社会的証拠について、

  • 比較
  • 社会的診断

を行うこととし、理論を展開しています。

この社会的証拠とは、リッチモンドによると『個人、あるいは家族など利用者の社会的困難の本質とそれらの解決への手段を示す時に、何らかの、そしてすべての事実から構成される』ものであり、事実の連続からなるとしています。

 

また、ソーシャルワークは『さまざまな人のために、さまざまな人とともに、彼ら自身の福祉と社会の改善とを同時に達成できるよう、彼らと協力して、さまざまなことを行う技術である』とし、ケースワークは社会改良の小売り的方法と位置付けました。

『ソーシャルケースワークとは何か?』

1922年に出版された『ソーシャルワークとは何か?』は、ヘレンケラーと家庭教師のサリヴァンの例を挙げ、ケースワークの事例として6例挙げている内容となっています。

パーソナリティの発達を、事例を用いて理論的に説明し、ソーシャル・ケースワークを『ソーシャル・ケースワークは人間と社会環境との間を、個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティを発達させる諸過程から成り立っている』と定義しています。

人を『社会的諸関係の総体』としてとらえ、この諸関係を調整することでパーソナリティの発達を図るという点に、ケースワークの独自性を求めたリッチモンド。

  1. 社会環境の中の人間としてとらえること
  2. ケースワークが専門職であること
  3. ソーシャルワークの経験を蓄積して実証的に理論化されるものであること
  4. 利用者の主体性を尊重すること
  5. 諸科学の知識を基礎とした合理的判断と科学的方法

という5つの点をケースワークの基本とし、専門家は訓練と専門的経験を通じて成長していく存在であると指摘しました。

ケースワークの原点にあるリッチモンド

フロイトの精神分析理論などが導入され、発展してきたケースワーク。リッチモンドは、『ケースワークの母』としても知られていますが、心理学や精神医学に偏り、診断主義と機能主義の論争が激しくなった結果、対象者が置き去りになってしまうという状態に陥ってしまった時に「リッチモンドに帰れ」と言われたことでも有名です。ケースワークの枠組みに医学モデルを取り入れて、治療するという医学モデルを確立したリッチモンド。

自立支援や環境の調整等、支援する際に必要な方法や知識は今日のケースワークの基本となっています。

介護ぷらす

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